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PRIDE 初めての声【ネット小説】

あれから1日、メールはなかった。

「仕事終わりに会えます。」というメールが最後だった。

次の日も1日中待っても返事はなかった。

(なんで返事なし?今何してるん?)

返事がないことへの不安もあったが

誰かと会ってるんじゃないかという不安の方が大きかった。

会ったこともない相手になぜこんなことを思うのか

大翔にはまだこの時は分からなかった。

(所詮出会い系サイトやん、何ムキになってんの、俺)

そう大翔は自分に言い聞かせても納得はできていなっかった。

事実、仕事など手につかず、スマホばかりが気になって仕方がない。

営業の仕事は本数稼いでの現場だし、大翔は店長を目指していた。

事実、会社からも期待されてもいた。

自分の営業成績も悪くなかったし、本社への報告も自信を持って毎日していた。

それが、今日は全く手につかない。

仕事でお客さんを目の前にしてもいつものようにスムーズに契約が取れない。

仕事が終わり、コンビニへ行き、いつもの弁当を買う。

帰り道、何も考えることもなく、虚しさだけが残る。

ただ聞こえるのは、車の排気音、住宅街から聞こえる小さな話し声。

そしてTVの音、音楽の音。

ただ、今日は風の匂いを感じる。乾いたような、草木の匂い。

(普段はなんも感じひんのにな)

アパートへ着くとすぐにスマホを確認した。

着信、ライン、メール着信なし。

大翔は、チョコレートはさほど好きではないのだが

ビターチョコレートを1つだけ食べた。

(今日は飯、いいわ)

ベットに横になると、目をつぶる。(明日はあるかな)

淡い期待を抱いて、眠りについた。

 

翌昼前、「着信メールがあります」とスマホに表示される。

大翔はすぐさまスマホを手にした。

「連絡先を交換しませんか?」彼女からだ。

「良かったらライン交換しませんか?」彼女からだ。

「いいですよ。」すぐに送信。

IDを送ると、スマホのラインに友達追加されていた。

名前は【凛華子】。

「良かったらライン通話しませんか?」凛華子からだ。

翔は仕事中だったけれど、「休憩入ります。」と言い残し

すぐにその場を離れて休憩に入る。

「電話できます。」と送信。

すぐに凛華子からライン通話があった。

 

「こんにちは。今仕事中やった?」

その声は思っていたより、想像していたよりもはつらつとしていた。

「大丈夫です。今休憩中なんで。」

「そっか。なら、よかった。」

「なんで連絡くれへんかったん?ずっと待ってたんやけど。」

大翔はつい出た言葉に驚く。(ずっと待ってたんや)

「あー、昨日は友達と会ってた。だから連絡できなかったんよ。ごめんね。」

(1日連絡してないだけなんだけどな)

「今日は何してるん?」(俺、何でそんなこと聞いてんだ)

「今日は実家の手伝いだよ。」

「じゃ、今日は連絡できたやん。」なんだか腹立しくなる。

「誰かと会ってたりしてたんじゃないよね?」

(いやいや、友達でも連絡できるでしょ)

「友達だよー。買い物行ったりしてたし。」

(連絡しないの、そんなに気悪くさせたかな)

(俺、これじゃだめだな)と思い、話題を変える。

「趣味ってなんなん?」

「料理かな。」

「得意なのは料理だよ!」

「自分でゆう事じゃないでしょ(笑)。」

(俺、感じわるっ)

「感じ悪いな(笑)。結構何でも作るよ。好きだし。あ、あと読書とか。」

「何知的ですって言ってんの(笑)。」

「あのさ、初めての電話でゆう事じゃないよね?会ったこともない相手にさ。」

「ほんまに思ってることゆって何があかんの?(笑)」

「確かに。(笑)上っ面よりいいけどね。けど、感じは良くない。(笑)」

「いつ会えるの?」
「明日、仕事終わりはどう?18時に終わるから、それからどう?」

「ええよ。俺が何時に終わるか分かんないから待たせるかもだから

店舗で待ってもらっていい?」

「別にええよ。じゃ、明日またラインするよ。」

 

凛華子との電話が終わった。

大翔との電話が終わった。

 

声が耳に残る。

明日、会えるんだ。

 

それが、20XX年5月1日のこと。

 

 

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