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PRIDE 出会い系サイト 大翔の場合 【ネット小説】

(いろんな人おるんやな)

ずらりと並ぶ女性を見て、思わず見入ってしまった。

メールが入る。

「私と会いませんか?いくらなら会えますか?」

(は?何でお金を払わなあかんねん。こっちが欲しいわ)と苦笑いする。

(やっぱり出会い系サイトなんてこんなんばっかやな)

検索してしまった自分を大翔は後悔し、情けなくもなる、

スマホを手にしたまま寝ころんだ。

「ん?」思い出したように起き上がった。

メール。

「会いませんか?」

写メがあって、片目だけがこちらを見ている。

「会いたいです」メール送信。

なぜか、すごく惹かれた。魅力的だった。

「会いたい」本当にそう思った。

【出会い系サイト】なのは分かってる。

タイプじゃなかったら、会わなきゃいいだけ。

断ればいいだけの話。

そう大翔は自分に言い聞かせ、納得させる。

けれど、大翔は待てない。

「いつ会えますか?」メール送信。

メールがあります、と表示。

「どこで会えますか?いくらならいいですか?」既読無視。

メールは返ってこない。

他の女性からばかり。既読無視。

落胆している自分に気づく。

【出会い系サイト】なのは分かってる。

(何を期待してるんだ、俺。何をずっと待ってるんだ、俺。)

溜息をつく。

(分かってんだけどな。)

なんだか自分がおかしくなる。

大翔は仕事中もスマホが気になって仕方がなかった。

確認。返信なし。

まだか。もう1日経ってる。

「からかわれたかな。」自嘲する。

「もう諦めるか、待つの。ってか、始まってもないか。」

仕事も終わり、コンビニへ行き、いつもの豚バラ弁当を買う。

(いつもと変わらんな)と歩きながら、帰り道一人思う。

もう5月になろうとしている。

広島へ来て、冬が過ぎ、春が来てしまった。

「もう寒い季節もほんまいつのまにか終わったな。」

誰もいない帰り道、呟いた。

アパートへ着き、スーツを脱いで、シャワーを浴びた。

スーツは嫌いじゃないけれど、営業の仕事のせいか

笑顔が本物なのか分からなくなり、自分に疲れる時がある。

できれば、帰ればすぐスーツを脱ぎたいし、なんとか解放されたい。

シャワーをすぐ浴びることが習慣づいてしまった。

広島へ来て、ひとりになって、誰からも干渉されないなら

自分のやりたいようにしたいと思った。

生活もそうしたいし、生活のペースもそうしたいと思った。

部屋へ戻ると、スマホが光っている。

「着信?ラインか?」大翔はスマホを手に取った。

着信でもなく、ラインでもない。

メール着信のお知らせ。

【出会い系サイト】からだ。

(またか。もうええわ。)

スマホを閉じようとしたけれど

なぜか気になってメールを開くと彼女からメール。

「仕事終わりに会えます。」シンプルなメール。

 

「会いたいです」と送信したのは確信したから。

その確信は「会いたい」という気持ちと

「彼女を知りたい」という気持ち。

興味本位だったのかもしれない。

けれど、「会いたい」気持ちに嘘はなかったし

なぜかそうしたい【衝動】にかられた自分を信じたかった。

【衝動】。

【会いたいという衝動】。

まだ会ったこともない人への【衝動】であり、【選択】はなかった。

 

 

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