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PRIDE 軌跡 【ネット小説】

子どもの笑い声が聞こえる。

それは、とても近くで。

耳元で囁かれる、小さな声。

「一緒に数える?」 

凛華子は子どもに寄り添い笑顔を向ける。

子どもは恥ずかしそうに頷く。

「1.2.3.4・・」子どもと一緒に数を数えていく。

子どもは時々確かめるように凛華子を見る。

「大丈夫!できてるよ!」

パッと顔が明るくなる。

「これね、新しいふでばこ!」

その女の子はこの春に1年生になったばかりだった。

薄紫のキラキラしたラメ入りの綺麗な筆箱。

ふたには小さなピンクのリボンがついていた。

その子にぴったりだった。

「お母さんがね、鉛筆をいつも削ってくれる!」

その子は嬉しそうにふでばこを凛華子に見せる。

「お母さんに買ってもらったの?」

「うん!」

笑顔があふれて、凛華子まで笑顔になる。

(温かいな、心地いい)

 

凛華子は式が決まってから仕事を始めた。

仕事といっても短時間ものだった。できそうなものを選んだ。

放課後教室だった。

授業が終わり、子どもたちは教室にやってくる。

家族が働いたりしているので、その時間まで子どもたちは

宿題をしたり、教室で過ごしたりする。

友だちと遊んだりもする。

凛華子にはどの子どもも、可愛いかった。

子どもを授からなかったこともあるかもしれない。

(もし産んでいればな)

なんて考えることはよくあった。

けれど、この仕事は好きだったし、自分に向いているなと

思った。子どものことを考えることは、単純に子どもを

見守るだけではなく一緒に学び、考え、笑い、たまには

泣きそうにもなり、怒ったりもする。

子どもから教えてもらう感情や発見はたくさんあった。

子どもが持っている感性は豊かだな、と改めて知る。

(本当にいい仕事やな。あたしは幸せだ)

凛華子はそう思う。

 

大翔は凛華子の子どもたちの話を聞くのが大好きだった。

「今日はね、算数やった!いくつってあるやん。

たとえば3つとか。3個とは違うよね(笑)」

「どういう意味よ(笑)」

「例えば足し算とか引き算とか。(笑)

一番難しいよね(笑)。分かるわ(笑)」

凛華子は本当によく笑い、いい笑顔をするようになった。

子どもの話をする時が一番いい顔をしている。

 

「あの子ね、できるようになった!」

そう言っている凛華子の顔は、まるで自分ができるように

なった時の顔だ。

それを見ていると本当に良かったと思う。

応援しようと思う。支えようと思う。

この人といて良かった、と気づかされる。

 

この笑顔を見るたびに、子どもの話を聞くたびに

どれだけ傷つけてきたのかな、とふと思うときがある。

笑っていなかった時の凛華子は何を考えていたのか。

「何考えてるか分からんわ。」

俺は言ってしまった。

あんな顔をさせてしまっていたのは俺のせいでもあるのにな。

もう、本当にさせたくない。

【辛い想い】は、もういいよ、凛華子。

俺はいくらだって変わるって決めたから。

大翔は想うのだった。

 

大翔が自分の話を声に出して笑って聞いてくれることが

嬉しくて仕方なかった。

子どもの話を聞いてくれる。自分の話を聞いてくれている。

これまで聞いてくれなかったわけじゃない。

式が決まったからじゃない。

思うことが1つあった。

【自分が変わらなければ相手は変わらない。】

式のためじゃない。

もう一度自分を信じてみようと決めた時

まだやれていないことがあった。それは

【自分が変わろうとすること】

相手にばかり、大翔にばかり【求めすぎてた】

あたしは何もしてこなかったから。

そのことに気づいたから。

それで大翔が笑ってくれるなら、あたしは努力する。

やれるだけやる。

そう決めてた。

【求めてばかりの愛情】はやっぱり片思いやな。

凛華子はそう思うのだった。

 

どんなカタチの恋愛も夫婦も【一方通行】はなんだか寂しい。

やっぱり想われたいし、想いたい。想い合いたい。

そんな【愛のカタチ】を創りたい。

一人では創れない。【二人で創るもの】

【世界で二人にしか作れない愛のカタチ】

それは、ものすごい【軌跡】なのかもしれない。

 


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