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PRIDE 二人の選択~未来の選択~ 【ネット小説】

息がうまくできない。鼓動が速くなる。

頭が真っ白になる。

「凛華子。」

遠くで大翔の声が聞こえる。

すぐ傍にいるのに。

(なんて言ったの?)

 

この夜、大翔は凛華子に何を話し、凛華子はなんて答えたのか

凛華子は忘れてしまった。

記憶がまったくなくなってしまった。

大翔の【事実】を否定したのではなく

凛華子自身その【事実】を消してしまった。

 

数日後

「一緒に暮らそうか。」

「え?」

「新居探そうよ。」

大翔が突然、凛華子に切り出した。

両親には大翔と付き合っていることを伝えていない。

両親は誰かと付き合っていることは気づいているだろう。

ほぼ家に帰らず、帰るのは荷物を取りに帰るだけ。

大翔とは、ほぼホテルで過ごしていたからだ。

 

「俺、凛華子の両親に挨拶に行くわ。」

「本気でゆうてるん?」

「そうでないと一緒に暮らせんし、ずっと一緒にいられない。」

 

これまで抱えてきた一切の不安を打ち消す言葉だった。

もう一緒にいられないかもしれないと思ったし

そうするしかないと思っていた。【別れ】以外の【選択肢】

は残されていない、と思っていた。

けれど、大翔が【別れ】以外の【選択】を与えてくれた。

信じられなかった。

絶望しかなかった凛華子に、まだ【二人でいる未来】

があることを大翔は伝えてくれた。

 

人を本当に好きになった時

あるのは【強さ】でもあり【弱さ】でもあると思った。

けれど、きれいな言葉だけでは終わらないことを知る。

怒り、悲しみ、嫉妬や妬みなど自分の嫌な感情もたくさんあることも知る。

【恋愛】とは【美しい】ものであり【強くさせる】ものでもあるけれど

最も【人間くさい】ものなのかもしれない、とも思うのだ。

 

凛華子は両親と祖母と暮らしている。

 

小さな頃から、怒られる日が多かった。

厳しい家だった。

 

両親や祖父母はそんなつもりはなかったのだろうけれど

弟は成績が良く、頭が良かったから

凛華子はそんな弟が羨ましかったし

自分が【できない子】であることをよく知っていた。

事実「家の恥だ。」と何度言われたことだろう。

それでも【いい子】でいることで自分を保とうとしていた。

保つ方法しか知らなった。

 

「うちの両親厳しいよ?」

「ちゃんと伝えれば大丈夫。何度でも行くよ。」

その言葉が凛華子を強くさせる。

 

大翔が凛華子の実家に行く日が来た。

大翔と凛華子は近くの百貨店に向かった。

二人はまずジュエリーコーナーへ向かった。

「指輪見に行かん?」

大翔が言ったからだ。

「ペアリング?」

「みたいなもん(笑)。」

 

お店にはブランドの指輪が並ぶ。

【ペアリング】だけれど、なんだか【結婚指輪】を見ている気持ちになった。

見ていたのは、Diane&Pinkky。シンプルなデザインが素敵だった。

「これ、ええな。何号?」

「9号くらい?」

「測ってもらったら?」

「すみません。サイズ見てもらえます?」

大翔が店員に声をかける。

店員が凛華子の手をそっと取り「失礼しますね。」というと

「このブランドだと9号ですね。他のですと8号サイズのものもありますけれど。」

店員が笑顔でこちらを見る。

「僕のも見てもらえます?」

店員は、大翔の手を取り「失礼します。」

というと「16号ですね。」といった。

「今このブランドでサイズありますか?今買いたいんですけど。」

「それですと、あるのはこちらです。」

差し出された指輪は先ほど二人で見ていたものだった。

「良かったね。」

大翔が凛華子に笑いかける。

「これ包んでもらえます?」店員に声をかけていた。

「分かりました。お待ちくださいませ。」

店員は後ろを向き、ラッツピングし始めた。

「なあ、これ可愛くない?」

大翔が指さしたのは、ハートのダイヤの入ったリング。

「それはあたしには可愛すぎるよ(笑)。」凛華子は笑う。

凛華子は自分の歳を考えた。

本当に可愛らしいリングだったから、あたしには似合わない。

それを大翔は本気で

「可愛いやん。」と必死で言ってる。

(そういうところの大翔が可愛いよ)と凛華子は思った。

 

「凛華子はあっちで座って待ってて。支払いするから。」

ペアリングだし、お金は半分でって思ってたけど

大翔の気持ちを考えると素直に嬉しくて

「分かったよ。」と言って、その場を離れた。

 

しばらくして大翔が笑顔で駆け寄る。

大切なものを抱えて。

 

次に、お土産売り場に向かった。

凛華子の両親に手土産を買うためだ。

「何がいいかな。」

「ゼリーとかやとなんかありきたりやんな(笑)。

色んな味入ってるやつにする?」

「そうやなー。」

二人でもう一周店内を回る。

「和菓子は?おばあちゃんおるし。」

「そやなー。和菓子、いろいろあるなー。」

お土産を選ぶのに30分以上経ってしまった。

それなのに、まだ決まらない。

 

「あ、ふわふわチーズケーキやって!」

「モロゾフのケーキやんか!めっちゃうまそう!」

それは、モロゾフのふわふわチーズスフレだった。

 

「小さいし、切って食べたらちょうどいい大きさやね。

チーズスフレならあんまり甘くなさそうやし、おばあちゃんも食べれるね。

お母さん好きそう(笑)。」

「ほな、これやな。」

「すみません。これ、1つ包んでもらえます?」

大翔が店員さんに声をかける。

その様子をみているのが、なんだかこそばゆい。

これから、二人で両親に挨拶に行くんだなって思うとすごく

緊張もするけれど、大翔がいるから大丈夫。

心強かった。

 

実家に行く時間まで

二人で小さなカフェにいた。

人は少なく、二人の周りには誰もいなかった。

二人でキャラメルラテを頼む。

 

大翔が小さな箱を取り出した。

「俺と結婚してください。」

まっぐな目で凛華子を見つめる。

迷いなどなかった。

「うん。」

翔が凛華子に指輪をはめた。

小さなダイヤの入ったシンプルなデザイン。大翔らしい。

二人で選んだもの。

【ペアリング】みたいなものだよ、と言ってたけれど、

立派な【結婚指輪】に見える。

「あとな、これ。」

大翔が恥ずかしそうに差し出す。

小さな箱。

中には、ハートのダイヤのリング。可愛らしいリング。

「似合うから。これは、婚約指輪ね。」

大翔は本当に真っすぐに気持ちを伝える。

揺らぎも見えない。感じさせない。

そんなところが好きだ。

 

大翔の【過去】も【いま】も凛華子にはなかった。

あるのは【二人の未来】だけだった。

 

20xx年5月下旬のこと。

 

 

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