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PRIDE 繋がれた糸 【ネット小説】

「荷物の買取お願いしたいんですが。査定してもらえますか?

あるのは、冷蔵庫、二人用の食卓、洗濯機、食器棚、ガス台、レンジ、ベッド・・・」

凛華子は買取業者に伝える

 

数時間前、電話で大翔と電話で大喧嘩をした。

「もう無理。」

「そしたら好きなようにしい。」

「分かった。出てく」

「勝手にし」

そんなやりとりがあったのだった。

原因はあの元カノと連絡していたことからだった。

凛華子の中で処理などできるはずないし

許せることではなかった。

「出ていく。」と言った言葉ももう本当に限界だった。

自分が保てなかったし、保てるはずなどなかった。

大翔を信じていた気持ちや好きな気持ちより

【許せない】というより

【許すことができない自分】が嫌だった。

 

【過去】は誰に出でもあるし

【過去】は変えられない。

私たちは【今】を生きていることをことを充分知っている。

けれど、その【今】が【過去】により

【哀しみ】や【苦しみ】【辛さ】【憎しみ】に包まれている時

どう向き合っていけばいいのだろうか。

いつも立ち止まる。

【許す】ということ。

【許せない】ということ。

その対象は誰なのなのか。

少しだけ冷静に考えることも必要なのかと思うのだ。

【許す】ことを相手ではなく【自分】であった時

何に気づき、変わるのか、と思うのだ。

 

仕事が終わると大翔は同僚に

「悪い。今日は送ってくれへん?」

「別にいいですけど。」

「彼女が家出て行ってるかもしれん。

一人で中見るん不安やし、悪いけど一緒に入ってくれんかな?」

「いいっすよ。」

そう言って車に二人で乗り込み、凛華子と住むアパートへ向かう。

やはり電気がついていない。

(やっぱりか)

昼間、電話で大喧嘩した後、大翔は何度も凛華子にラインを送ったが

返事が返ってくることはなっかたからだ。

(本当に終わりやな。)

言葉もない。浮かんでこない。

「いないみたいですね。どうします?」

同僚が翔に声をかける。

「一回入ろ。一緒にきてもらえる?」

「いいっすよ。」

鍵を開け、中に入る。電気をつける。

リビングの電気をつけた。

本当に何もなかった。

二人で選んだテーブル、ソファー、ラグ、TV、食器棚、TV台・・・。

(ほんまに出て行ったか・・。)

「俺、マクドかなんか買ってきますよ。食べるものないっしょ。」

「そやな。」一言だけだ。

同僚は出て行った。

何もなくなった部屋。凛華子のいない部屋。

(こんなに寂しいものか)翔は思う。

虚しい。取り残された孤独。

ただ、残された部屋に少し凛華子の匂いがある。

哀しい。

 

「買ってきたんで一緒に喰いましょ。」

同僚は気を使ってか、二人分買ってきている。

食欲などなかった。あるわけなかった。

 

「今日の晩御飯なに?」

「いつもとかわんないよ(笑)。」

昨日まで交わされていた当たり前の会話が一瞬にしてなくなった。

(耐えられない。この現実から逃げたい)

それだけが頭を駆け巡る。

 

大切な人を失ってしまった時

人は【後悔】より【虚しさ】【哀しみ】【苦しみ】【辛さ】

だけが残る。

耐えられない現実から逃れようとさえする。

でも、その【現実】から逃れることなどできない。

受け入れるしかない。

 

人は逃れられないものがあること。

抱えていかなければならないものがあること。

すべてではないけれど、【許す】ことも必要なこと。

深く愛すれば愛するほど難しい。

 

【愛している】というシンプルなことを困難なものに

難しくしているのはなぜなのだろう、と思う。

難しくさせているのは何なのだろう、と思う。

一つ一つ紐を解くように解いていけば

一本の糸になるように

繋がれた糸になるはずなのに

絡まれた糸は簡単には解けない。

それでも繋いだ糸は離れないでいるのだ。

 

 

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