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PRIDE 泪のわけ 【ネット小説】

凛華子と会わなくなって3日。

まだ3日しか経っていないのに。

(何してるんやろ)

大翔はベッドに横たわり考える。

(忘れよう)何度もそう思った。

けれど、できなかった。

(俺、ずっと仕事休んでるわ)

何も食べれず、吐く。

吐くものもなくなったはずなのに

また吐きにトイレに駆け込む。

(しんどい)

身体もこころも悲鳴を上げる。

(明日から仕事行かんとな)

目を閉じる。凛華子の顔、身体、声が浮かぶ。

声が聴きたい、抱きしめたい。

大翔は眠りに落ちた。深く、深く。

 

翌日、いつものように仕事に向かい、仕事をする。

「大丈夫ですか?」同僚が声をかけてきた。

「大丈夫。もうなんともない。」

大丈夫なわけないし、なんともないはずがなかった。

仕事の合間に凛華子の携帯番号を探す。

メールアドレスを探していた。

凛華子は翔からの着信は勿論、ラインもショートメールさえも

拒否していた。

連絡する手段は残るは1つ。

メールアドレスだけ。

大翔は知らなかった。

けれど、大翔の仕事がこの時ばかりは役立った。

役立った、という言い方は不適切なのかもしれないし

間違っているのかもしれない。

けれど、大翔にはこの方法しかなかった。

どんな方法でもいい。

知りたかった。

 

凛華子のアドレスを見つける。

(あった)

スマホを取り出し、凛華子のアドレスを入力する。

(なんて打とう)

今は言葉が見つからない。

大翔はそのまま仕事へ戻った。

 

アパートに帰り、いつもならすぐに浴びるシャワーも浴びず

スマホを出して、ずっと眺めていた。

時間は過ぎていく。21時。

(もう遅いな、今日は。なんて打ったら分からんし)

大翔はシャワーを浴びにユニットバスへ向かう。

シャワーを浴びて、部屋へ戻り、スマホを手に取る。

まだ言葉は出てこない。溜息をつく。

「元気ですか?」送信。

正直な気持ちだった。素直な気持ちだった。

 

メール着信音が鳴る。

凛華子は部屋でリンゴといた。ベッドに寝ころんでいた。

ただ何をするわけでもなく。リンゴだけがそばにいた。

(メール着信?何やろ?迷惑メール?)

スマホを手にする。

「元気ですか?」

文面を見ただけで大翔からだと分かった。

他の人からだとは思わなかった。

「元気ですか?」送信。

知らないアドレス。

けれど、それはきっと大翔だ。

「元気じゃないです」

(やっぱり)

凛華子はスマホと財布を手にし

「ちょっと出かけてくる!」

そう言って実家を飛び出した。そう、大翔のもとへ。

 

「会いたい」とは言われていない。

けれど身体が動く。【衝動】で。

【会いたい】とこころが叫ぶ。【真っすぐ】に。

 

大翔のアパートに着いた。

「何で来たん?」(来てくれたんや)

「元気じゃないってあったから。」(やっぱり会いたくなかったか)

「上がれば?とりあえず。玄関やし。」

「ありがと」

二人で引っ越した新居から

会社で借りるアパートに大翔は戻っていたのだ。

 

沈黙が続く。

「俺、もうしんどいねん。」

大翔が頭を抱えた。本心だった。

「うん。」(あたしが出てったせいだ)

大翔はトイレに行き、吐いている。

凛華子は立ち尽くしていた。

部屋を見渡す。

ゴミは片付けられておらず、散乱している。

灰皿だけが山盛りだ。

(食べてないの?)

 

トイレから大翔が戻る。
「食べてないと思って

飲み物ならってカフェオレ買ってきたんやけど。」

大翔は凛華子を見ようともしない。

(当たり前か)凛華子は下を向く。言葉もない。

「もう消えてくれや。俺の前から。」

(え?)

「もう姿見せんとって。」

大翔の目から大きな泪の粒がこぼれ落ちる。

大翔が泣く姿などみたことないし、想像もつかなかった。

「はよ、帰れや!」凛華子に怒鳴った。

大きな声を出されたことはあったが

怒鳴られたことはなかった。

 

(帰りたくない)凛華子は思う。

「帰れって!」

大翔の大きな泪の粒はどんどんこぼれ落ちる。

凛華子の目には泪が溜まる。

(今、泣いたらダメだ)強く思う。

「分かった。」

 

車のカギを手にし、大翔を背中にした。

振り返ると、大翔はうなだれ、泪を流したままだ。

「カフェオレ、良かったら飲んで。」

大翔の返事はない。

「それじゃ。」

凛華子は扉を閉めた。

大翔は追ってくることはなかった。

 

凛華子は2度目の泪をこぼした。

こらえていたものが溢れた。

【許せなかった】自分を。

1度目は【許そう】という泪だった。

けれど2度目は違う。

【許されない】泪だった。

【傷つけた】。大翔を。

大切な人を。愛している人を。

初めて好きになった人を。

凛華子の泪は止まらなかった。

 

 

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