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PRIDE 真実の愛~二人の覚悟【凛華子の場合】~ 【ネット小説】

「もう引き返せないよ。」

大翔のその言葉は、とても力強く

決意された何かが感じられた。

凛華子は、その言葉を信じようと思ったし

彼と生きていこうと思った。

 

大翔の過去。

奥さんとまだ離婚していない【事実】。

たとえ、離婚調停中だからとはいえ

まだ離婚は成立していない。

離婚の原因は、元カノとの不貞行為にあったらしい。

元カノのことは、凛華子は聞きたくない話だったし

聞くべき話でもない。

聞いたところで何もメリットなどない。

そんなことくらい分かっていた。

元カノの大翔への想いも分かっていた。

勿論、奥さんの翔への想いもだ。

 

世間では、不倫や略奪愛を良く思わない人は多くいるだろう。

デメリットの方が多いかもしれない。

【不倫】や【略奪愛】という言葉で表せば

そう片付けられてしまうことなのかもしれない。

【想い】という言葉であれば、どうであろうか。

【相手を想う】【愛しさ】【愛おしい人】

こう言い換えればどうであろうか。

誰かを傷つけるから非難されることなのだろうか。

 

少なからず、誰にでも起こりえる【愛のかたち】なのではないかと思う。

他人のことだから非難もできるし、いろいろ言える。

けれど、【想う】気持ちは同じなのではないかと思う。

誰かを傷つけようと分かって【想う】ことをすることは

果たして【真実の愛】と言えるのだろうか。

誰も傷つかない恋愛などないかもしれない。

けれど、傷つけようとしてする恋愛は

【真実の愛】とは思えないのである。

 

凛華子は、大翔と凛華子の実家へ向かっていた。

凛華子の荷物を取りに行く為だった。

「引き返せない。」

凛華子も十分、分かっていた。

それが何を意味するのか。

【覚悟】。

【二人でいる覚悟】【二人で生きていく覚悟】。

簡単ではない。容易ではない。

理解されることもないかもしれない。

それでも、二人でそれを【選択】し【決断】した。

 

必要な荷物を取り、大翔のアパートへ戻る。

車中、手を繋いだまま、二人会話をすることはなかった。

 

アパートへ着き、凛華子の荷物を降ろす。

荷物といっても、洋服くらいだ。

大きなものは、秋物のコートくらいだった。

「これから、またよろしく。」

大翔が荷物を降ろすと、凛華子の方を振り向き言った。

「よろしく。」

凛華子も答える。

かつてのような、馴れ合いのような距離ではなかった。

もっと強く、深くころろに届く言葉だった。

 

二人の生活がまた始まる。

凛華子は、アパートから近い病院の受付のアルバイトを始めた。

帰って、晩御飯を作る。

キッチンは一人用なので料理の品数も多く作れなかった。

そんな毎日が少しずつ過ぎていく。

毎月翔の給料日には子どもの養育費を3万円振込む。

これだけは、ちゃんとしないといけない、と思うのだった。

 

ある日、大翔が凛華子に言った。

「ミナトの誕生日なんよ。一緒にプレゼント選んでくれる?」

「ええよ。」

(にっこり笑ったつもりだけれど、笑えてた?)

凛華子は思う。

二人でコイザラスへ行き、おもちゃを見る。

選んでいる大翔を見て、胸が締め付けられる。

(こうして選んでたんやろか。)

また、苦しくなる。

「俺らも子ども欲しいな(笑)。一緒にいろいろ見たいわ(笑)。」

また、辛くなる。

(誰を想って?)

 

会計を済ませた大翔。

「これ、プレゼントで送りたいんですけど。」

「こちらに住所の記入をお願いします。」

店員は大翔に声をかける。

大翔は住所と名前を書いている。

その後ろで、凛華子は立ち尽くす。

切ない。

 

【愛すること】がこんなに切ないなんて知らなかった。

【愛すること】がこんなに苦しいことだなんて知らなかった。

【愛すること】がこんなに辛くなるなんて知らなかった。

 

【二人で生きていく覚悟】は

【あたしの覚悟】であったことも思い知らされる。

(まだまだだな)

上を見上げる。

本当に辛く、苦しいのは誰?

 

凛華子は想う。

 

【覚悟】。

 

その意味を知るのは、もう少しだけ先のこと。

 

 

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