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PRIDE 【覚悟】を強くさせるもの 【ネット小説】

(パパ、今日ハンバーグ!)

ソースは和風で大根おろしと大葉を。

マッシュポテトを添える。

ほうれん草はバターとマジックソルトであっさりと。

写メをして、大翔に送信。

 

あの日のこと。

そう凛華子の誕生日。

ケーキの味。

甘くて、切なくて、なんだか心に蘇る。

一緒に撮った写真がテーブルに飾られてる。

 

(凛華子からや。なんやろ。)

仕事の手を止める。

接客中だった。気になる。

会話の合間にそっとスマホを手にする。

(パパ、今日はハンバーグ!)

凛華子の笑顔とハンバーグの写メ。

吹き出しそうになった。

顔がにやける。

(こういうところ、ほんと凛華子かわいいんよな)

一生懸命作ったんだろう、プレートは

綺麗に彩られていた。

(俺の好きなもんばっか)

 

「何考えてるか分からんわ。」

何であんなこと言ってしまったんだろう。

言った自分を後悔する。

何考えてるかなんて

(俺が一番分かってて分からんとあかんのにな。)

大翔はスマホに映る凛華子の顔を

優しく触る。

 

「ケーキ、ごめんね。サプライズ・・。」

大翔が凛華子を喜ばせようとしたこと。

(一番分かってたはずなのにな、あたし)

お箸やコップを用意しながら凛華子は思う。

 

写真の横でクーがニャーと鳴いてる。

(あんまり声に出して鳴かないのに)

クーがテーブルをストンと飛び降り

凛華子のそばにすり寄って

ニャーと鳴く。ゴロゴロと喉を鳴らせて。

「どうしたの?抱っこ?」

クーを抱き上げる。

「赤ちゃんやな(笑)。」

クーは凛華子に抱っこされたまま

喉をゴロゴロ鳴らし身体をあずけている。

「パパ、もう帰るよ。」

凛華子はクーにそう言うのだった。

 

「ただいま。」

「おかえり。今日写メ見た?」

「見た見た!めっちゃ美味しそうやんか!」

「先、食べる?」

「そやな、ゆっくり食べたいし、先に風呂かな。」

「じゃ、沸かすね。着替えて。用意するから。」

いつもの凛華子。笑顔の凛華子。

【幸せ】だ。大翔は心からそう思った。

もう壊さない。

壊したくない。

壊させはしない。

 

「リー、クー、帰ったよ。サラ、おいで!」

サラは全力疾走で大翔に飛びつく。

「サラ、もう一回!おいで!」

サラは、最近「おいで」を覚えた。

サラも嬉しいのだろう。

 

「パパ、お風呂準備できた!」

「凛華子も入るか?」

「でも、ハンバーグあるしな。出来立て食べて欲しいし(笑)。」

「ええよ、一緒にはいろ。」

「ありがと、じゃ、ご飯少し待って。」

 

大翔と凛華子はゆっくりお風呂につかる。

こんな時間でさえ【幸せ】だ、と二人は思った。

このまま続けばいいと。

何気ない日常。

それ以上なんて望んではいないのに。

 

「先、上がるね、ハンバーグ焼かないと。」

「分かった。俺も上がるわ。」

凛華子が先に上がり、スウェットを着る。

俺も上がり、タオルで身体を拭いていた。

 

「嘘!なんで!」

凛華子の少し大きな声。

(何があった?)

たいしたことないだろうなんて

タオルで身体を拭きながらリビングへ向かった。

 

凛華子はキッチンに立ち尽くしている。

「ごめん。焦がした・・。」

(ん?)

「何が?」

「ハンバーグ・・」

「まだ焼いてないやん(笑)。」

「それがガスつけっぱなしにしてたみたい・・。」

(そか。)

「どれどれ。大丈夫。食べれる。俺、焦げた方が好きやし(笑)。」

(今、これ以上の言葉が見つからない)

凛華子は今にも泣きだしそうな顔をしていた。

 

ここ数か月

凛華子はよく忘れることがあった。

ガスもその一つ。

そのことをひどく気にしていた。

話していたことも

「そんなこと言った?」と言ったり

伝えたことも

「聞いてないよ。」と言ったりしてた。

初めは単純に忘れてるだけとしか思わなかった。

 

けれど、一緒にいてそうじゃないことに気づく。

【忘れてしまっている】。

喧嘩もしたけれど本当に分からないんだ、と気づいた。

 

凛華子と生きていこうという【覚悟】。

結婚する時に持ったもの。

凛華子を知るたびに

その【覚悟】はより大翔を【強くさせる】。

 

だから、俺は凛華子を抱きしめるんだ。

 


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