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PRIDE【寄り添い】生きていくこと 【ネット小説】

「どんな調子?」

先生が笑顔を向けて、優しく話しかける。

「特になにもないと思ってます・・」

「そうですか。なら良かった。」

先生はカルテを書いている。

「あの。」

凛華子が話し出す。

「ただ、最近前まで出来てたことがうまくできない気がします。」

先生は微笑んだまま凛華子に尋ねる。

「例えばどんなこと?」

「料理とか手際が悪くなったというか。どう話したらいいかな。」

「ゆっくりでいいよ。」

凛華子はうつむく。

「例えば、仕事している時はコレしなきゃいけないっていろんなことが

できてたと思うんです。指示されたこともこなさせてたと思ってます。」

「そうか。そうだね。」

「最近、料理とかしてて、2つ一緒にできなかったりします。分かりますか?」

先生は凛華子をただみつめている。優しい眼差しで。

「2つ同時にできる時もあるんですけど。その時は

今日は出来たなって思うんです。」

「そうなんだね。」

「ガスとか消し忘れてるのが気になります。」

「それは危ないね。」

凛華子の表情がくもる。

「誰でもそういう時はあるよ。僕でもある。」

「そういう時は、メモしておくといい。」

凛華子への優しい眼差しと柔らかい声のトーンは変わらない。

「そうなんですね。」

凛華子の表情が少し柔らかくなった。

「ただ、ガスは危ない。これは、ちょっと気をつけないといけないね。」

凛華子の表情がまた固くなった。

「でもね、誰でも失敗はあるから。そんなに気にすることもない。」

先生は微笑む。

「はい。」

「また何かあったら来ればいいよ。」

「ありがとうございました。」

凛華子と俺は診察室を出た。

 

「凛華子は待合室でちょっと座ってて。」

「どこ行くの?」

「ちょっと先生のところ(笑)。」

「なんで?」

「俺の事聞いてくるわ(笑)。」

そう言うと、凛華子の方を振り向かず、もう一度診察室へ入った。

「お座りください。」

先生に促された。

「俺はどう接していけばいいですか?」

「普通でいいですよ。」

「本人に怒ることがあるんです。」

「どうしてですか?」

「同じことを聞いてきたりしてイライラしてしまって・・・。」

「仕方ありませんよ。」

先生の目は優しい。声も穏やかだ。

「怒っていいのは、本人が自分を傷つけようとした時。

あなたや他人を傷つけようとした時だけです。」

返す言葉も、聞く言葉も見当たらなくなった。

「あと、薬を処方します。薬を飲んでいることだけは頭の

片隅にだけ置いといてください。」

この言葉はなぜか俺にのしかかる。

「夫婦になって添い遂げていくこと。」

先生は話続ける。

「もし、今奥さんとあなたが逆でも僕は同じことを言ってますがね。」

そう言って先生は微笑む。

「どういう意味か分かりますか?」

言葉に詰まる。

「【夫婦】はいろんなことを【覚悟】をして【夫婦】になります。

簡単じゃない。放り出すことは簡単です。

「無理だということも簡単です。見ないことも簡単です。」

「【寄り添う】ことの意味を考えるいい機会だと思います。」

大翔は真っすぐに先生を見つめる。

「考えるのはご主人、あなただけではなく

奥さんご自身も考えていらっしゃると思います。」

「諦めるのも【選択】のひとつでしょう。」

先生はカルテを書き始める。

「あなた、ご主人にどれだけの【覚悟】があるのか。

だからといって、あなたの人生でもあることは忘れないでください。」

「多分、奥さんはあなたの【人生】を考えているかもしれません。

奥さんの【選択】とご主人の【選択】がお互い

【寄り添う】かたちとなった時が一番望ましいですね。」

先生の声は温かく、優しいものだった。

 

待合室へ行くと凛華子は本も読まずに俺を待っていた。

「なに話したの?」

「俺の相談聞いてもらってた(笑)。ええ先生やな。」

凛華子と病院をあとにする。

 

車に乗り、大翔はすぐに凛華子の手を繋いだ。

少し驚いたようだが、笑顔を見せてくれる。

「今日は、病院ありがと。」

「一緒に来れて俺も良かった。」

繋ぐ手に力が入る。

 

【寄り添い】生きていく【覚悟】に

大翔は迷いなどなかった。

 


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