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PRIDE 共に歩む道 【ネット小説】

病院に行ってから数日が過ぎ、そして数週間が過ぎた。

特に何も変わらない【今までの生活】。

それが、凛華子を泪させることもあった。

 

大翔と買い物に出かけると親子で歩く夫婦を見かけた。

小さな子どもと手を繋いで歩く、ごく【当たり前】の光景。

(あー、これが普通の家族なんだな)

ふと、そう思う。

 

家に帰ればリーもクーもサラもいる。

凛華子には可愛い子どもだ。大切な【家族】だ。

けれど、いつか見た大翔のおもちゃを選ぶ【父親の顔】を

忘れることはなかった。

(他のことは忘れることはあるのにな)

うつむいて、こぼれそうになる泪をこらえる。

(このままでええんやろか)

 

食事の支度は、大翔が仕事に出かけると、

なるべく早くとりかかるようにしていた。

掃除をして、ひとつひとつやる。

時間がかかってもいい。このペースでいい。

ただ、手作りの料理は大翔に食べて欲しかった。

1品でもいい。ゆっくりでいい。

そう自分に言い聞かせる。

作っていると、外から子どもの声が聞こえてくる。

小さな子ども。ふと、カーテンを開けた。

保育所だろう。園児たちが、先生とどこかに行くようだった。

もうすぐ春になる。

(寒くないかな)

子どもたちが通り過ぎてくのを見ていた。

 

リーとクーはソファで寄り添って眠っていた。

(ほんま仲いい。あんたらは寒くないね。温かいね)

凛華子は見て微笑む。

サラは凛華子の足元を走り回る。

「あんたは元気ええな。」

凛華子はサラに言うのだった。

 

【寄り添って生きていくこと】。凛華子は考える。

自分がもし今逆ならしていただろう。

大翔はまだ30代。これからだ。未来がある。

子どももいる【事実】がある。

これから先のことなど誰にも分からない。

もしかしたらなど、あってはならないけれど

大翔になにかあるかもしれない。

想定外の出来事なんてたくさん起こりえることだろう。

ただ、【いま】を考える。

【これから】を考える。

 

40代と30代の意識の差は大きいだろうな、と思う。

 

ただ、【覚悟】は【意識】と関連しているのかもしれない。

【覚悟】とは困難なことを予想してそれを

受け止める心構えをすること。

【意識】は起きている状態や周囲の状況を認識していること。

 

凛華子は思う。

これから自分がどういう道を辿るのか。

大翔はどう辿るのか。

【夫婦】なのだけれど

各々の人生として考えるのである。

それほど大翔の人生を大事にして欲しかったし

これから歩むべき道の方向性を

きちんと選択して欲しいと願った。

その選択肢は1つではなく

たくさんあっていいと思った。

そこを誤ってはならない。

凛華子は思うのだ。

 

これから【夫婦】としてどうあるべきか。

その【覚悟】を凛華子は決めた。

【夫婦】の【カタチ】にとらわれる必要はないと。

お互いを縛る必要はないと。

 

気持ちが繋がっていれば、もうそれだけで充分。

 

凛華子は左手を顔の前にやる。

輝く薬指のリング。

(突然のプロポーズだったな(笑))

ハートのリングが重ねられている。

(やっぱりあたしには可愛いすぎたかな(笑))

浮かべた泪がこぼれないように上を向いていた。

 

もうすぐ春。桜の季節。

去年、大翔と一緒に撮った桜の写真。

あれから1年。

(早いな)

そっと写真に手を伸ばした。

 

「ただいま。」

大翔が帰って来た。

「おかえり。」

サラが真っ先に大翔のもとへ走っていく。

「ただいま。」

サラを抱き上げ

「ママを困らしてなかったか?ちっちできてたか?(笑))」

大翔は凛華子に笑いかける。

「大丈夫(笑)。今日はない。」

「えらいえらい(笑)たまにちょっとうまくできへんからな(笑)」

サラを見る目はとても優しい。

 

「そういえばさ、式場見に行かへん?」

(ん?)

「結婚式してないやん、俺ら(笑)」

(そうやけど)

「二人だけでもええし、身内だけとか友達だけとかさ。」

「いや、でもそんな簡単じゃないよ?」

「分かってるよ(笑)。」

「とりあえず、次の休み一緒に見に行こ!」

 

 

凛華子は大翔の言葉で自分をもう一度信じようと思った。

 

【2章完】


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