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鳥籠の中の私 恋心と憂鬱 【ネット小説】

朝の陽射しがとてもキレイだった。

ここから【新しく踏み出す日】にはちょうどいい。

そんな日だった。

後ろを振り返る。

綺麗に片付けられた部屋。

「もう何もないのね。」

ひとり微笑み、部屋を見渡す。

ただ、残っているのは、【わたし】の香りだけ。

ほのかに甘い香りだけが残る。

 

バタン、と玄関を開けて、鍵を閉めた。

鍵はポストの中に放り込んだ。

1歩、2歩。歩いて、家を眺める。

何年か住んでいた家。

やはり名残惜しい。

けれど、何故だろう。後悔などなかった。

【わたし】は前を向いて歩き始めた。

振り返ることはなかったし、振り向くこともしなかった。

 

「ネクタイ、これでいい?」

蓮司は京香にネクタイを締めながら聞いてきた。

「いいんじゃない?そのネクタイ好きよ?」

「そうなんだけど、シャツとネクタイ合ってる?」

蓮司はリビングにある時計を見た。

時刻は朝、8時過ぎ。出勤時間は8時30分。

少し焦ってるのだろう。

「大丈夫!ちゃんと似合ってるから!」

「京香が言うなら間違いないね!これにするよ。」

そう言うと蓮司は慌てて2階へ上がっていく。

スーツの上着を取りに行ったのだろう。

京香は蓮司のお弁当を詰めていた。

今日は、キャベツとミンチの味噌炒め・オムレツ・ポテトサラダにプチトマト。

「これでよし!!」

京香はお弁当の蓋をしめ、水筒にお茶を注いだ。

時刻は8時10分。予定通りだ。

蓮司がリビングに下りて来ると、もうスーツの上着を羽織っていた。

 

自分で言うのもおかしいけれど

蓮司は本当にスーツの似合う男だ。

結婚してもう3年以上は経つけれど

今だに【恋心】を抱いているのはなんだか少し照れくさい。

蓮司は頭も切れるし、仕事もできる。

長身でスタイルもいい。ルックスもいい。

付き合っていた頃よりも、結婚してからの方が

【不安】は大きくなってしまっている。

何故だろう‥

京香はそう思う。

 

時間は8時30分。

「じゃ、俺、出るわ!」

「これ、今日のお弁当!あと、お茶ね!」

「いつもありがとう。」

蓮司はそう言いながら靴べらを使い、靴を履く。

お弁当を受け取り、鞄を持った。車のキーを手にし、玄関を開ける。

今日は、晴れているけれど、少しだけ風が冷たい。

「今日は、少し寒いな。」

蓮司は寒そうな顔をして笑う。

「じゃ、行ってきます!」

「気を付けてね。」

「そうそう、今日はラインできるからラインして。俺もするから!じゃね!」

そう言って玄関を閉めた。

京香は笑顔で蓮司を見送った。

 

家が急に静かになる。

京香は一人リビングに戻り、ソファに座った。

時計の音だけが静かにリビングに響く。

洗濯機が回る音が聞こえる。

近所を通る車の音が聞こえる。

自分の【呼吸】が聞こえる。

静かだな。

 

京香も1日やることはたくさんある。

何もしないわけではない。

家事は勿論、パートもある。

 

ただ、蓮司が仕事に行った時間。

この時間だけはどうしても好きになれない。

この【家】に取り残されたような感じ。

それでいて、どうしようもない寂しさや虚しさだけが残る。

 

ずっとあるわけじゃないけれど

ふとそう感じる瞬間。

どうしようもなく【孤独】を感じるのだった。

【憂鬱】な1日が今日も始まる。 

 

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