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逸らせなかった瞳~気づいた意識~ 鳥籠の中の私 【ネット小説】

京香と出逢って結婚できたことは

蓮司にとってとても幸せなことだった。

というより、【京香にそばにいて欲しかった】

という想いの方が適切なのかもしれない。

 

勿論、京香のことは愛していたし

京香に出会った時、この人と【結婚】したいと思った。

【幸せにしたい】とも思った。

それは本心だったし、今もそう思う。

 

その幸せを

【京香がそばにいる】ということだけは

壊したくなかったし、壊されたくもなかった。

【京香】がそばにいるだけで、ただそれだけで良かったし

それ以上のことは望んでいなかったはずだった。

 

いつからだろう。

京香は、【妻】として理想の女性だった。

思い描いた女性だった。願った通りの女性だった。

料理はとても楽しみだった。

京香は、俺の味を覚えてくれて作ってくれていたし

部屋や家はいつもキレイにされていて

どんなに疲れて帰ってきても居心地が良かった。

 

また、京香は俺のことをよく分かってもいた。

【どうすればいいのか】ということをよく知っていた。

自分の立場をよく知っていた。

別に京香と【対等】に見ていないわけではないけれど‥。

居心地の良さはそれもある。

 

京香を大事にしなければいけないとも思うし

幸せにしたい、とも思う。

【幸せにしたい】のは

【愛しているから】なのか

【居心地の良さ】を壊したくないからなのか。

 

俺は【愛しているから】なのだ、そう信じたい。

京香は誰にも渡したくはない。

そんな存在であることには、間違いはなかった。

 

香澄が自分に好意を抱いているのではないかと感じたこと。

仕事をしながら、香澄が自分を見ていることは感じていたし

だから、仕事の話をしていても、すぐに話を切り上げていた。

好意には気づいていたし、分からないふりをしていた。

【気づかないふり】は必要だったし

【分からないふり】も必要なことだった。

俺から気づいてしまい、分かって香澄に話をすることで

俺は仕事以上の【意識】を持ってしまうだろう。

それは、【感情】ではなく

香澄を【意識】してしまうということだ。

また、それを香澄に気付かれたくもなかったし

きっとそれは香澄の気持ちを大きくさせることになってしまうだろう。

一線以上を引くことは大事だった。

だから、仕事以外の話は勿論しないし、目も合わせなかった。

もしかしたら、この時から香澄を【意識】していたのかもしれない。

 

俺は弁当を忘れて、京香に届けてもらった。

香澄に預かってもらうように頼んだのは

【妻】がいることを香澄に認識してもらうこと。

【京香】が【妻】であることを俺自身、香澄の前で確認させておきたかった。

普通ならそんなに考えもせず、妻からお弁当を受け取るだけのこと。

それをここまで考えたことは

やはり香澄を【意識】していたのかもしれない。

 

男は好意を抱かれて嫌な奴はいないだろうし

まして、相手が嫌いなタイプではなかったら

【意識】をしてしまうんじゃないだろうか。

そんな風に自分を正当化することも、悪くないと思えてきた。

 

京香がお弁当を持って来た時、香澄が俺をカウンターへ呼んだ。

「奥様が来られました。」

「分かりました。」

この会話をデスクで続ければ良かった。

それなのに、なぜカウンターまで行って、香澄の要件を聞いたのだろう。

カウンターから京香が見えた。視界に入る。

京香がこちらを見ていることも分かっていた。

「お弁当、持ってこられました。」

香澄が話す。

「ありがとう、伝えてくれて。」

「いえ、お願いされたことですから。」

香澄は俺から目を離さない。

俺も香澄から目を逸らすことができなかった。

その間も京香が視界に入る。

 

なぜ、あの時、香澄から目を逸らせなかったのか。

ずっと【気づかないふり】をしてきたし

【分からないふり】は【必要】だったはずだった。

それは、俺自身の【意識】を保つためだけのものだったから。

 

蓮司の目に香澄が映る。

心には京香がいること。

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