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振り向かせたい人 ~求められたい二人~ 鳥籠の中の私【ネット小説】

蓮司と出逢い、一緒に仕事が出来ること。

同じ空間にいるということ。

ただ、それだけで良かった。

それ以上は望んではいなかったし

望んではいけないとも思った。

 

けれど、蓮司の奥さんを見かけたことで

想いは一気に膨らんでしまった。

望んではいけないと思っていたことも

【この人】のそばにいたいと思った。

 

 

蓮司を【振り向かせたい】。

【奥さん】を見るのではなく

【女性の一人】としてあたしを見て欲しい。

いつからこんなに好きになったんだろ・・。

 

カウンターから蓮司と話をした。

京香が視界に入る。

「奥様、いらっしゃいました。」

「ありがとう。伝えてくれて。」

香澄は目を逸らさなかった。

その目は、もう蓮司を捉えて離さなかったし

【恋に落ちている】ことを訴えた目であった。

初めて、蓮司が香澄と目を合わせる。

目を逸らさない。逸らせないのだ。

(奥さんじゃなくて、今はあたしを見て)

心からそう思う。

 

蓮司は奥さんのもとへ歩んでいく。

その姿を見送る。

切なくなる。辛い。

けれど、なぜだろう。

この人は、あたしのところにまた【来る】だろうという気がしてしまう。

 

奥さんと蓮司が会話をするのを見ていても

なぜか少し【余裕】だった。

 

蓮司とは何の関係もなければ

関係が始まったわけでもない。

ただ、【予感】はする。

 

あれから、蓮司は香澄の目を見て話しをするようになったし

仕事以外の話もするようになった。

どこか二人で出かけたりするわけではないけれど

二人の関係性が変わったことは

【香澄】にも【蓮司】にも分かった。

お互いを【意識】していることはよく分かった。

あとは【タイミング】だけなこと‥。

 

【意識】してしまうほど

【タイミング】は遠くなる気がした。

けれど、想いは強くなる。

 

蓮司が奥さんを大事にしていることは知っていたし

分かっていること。

決して、【一番】にはなれないこと。

けれど、求められれば応えるし

そこに、【本当】の【真】の【愛情】があるのか

と聞かれれば

蓮司に聞いてみないと分からない答えだった。

 

ある日、帰りはひどい雨だった。

駐車場まで傘をさして歩いていくにしても

服はずぶぬれになってしまう。

 

空を見上げた。

真っ黒な雲が空を覆い、大粒の雨が空から降っている。

(これは止まないな)

香澄は、傘を開き、歩こうとした。

 

すると、背後から蓮司の声がする。

「送ってく。」

「いいんですか?」

「雨すごいし、危ないよ。ちょっと待ってて。」

香澄は蓮司が戻ってくるのを待った。

なぜか、とても自然の成り行きのことだった。

 

蓮司は助手席に香澄を乗せ、車を走らせる。

「家、どのあたりか教えてね。近くになったら。」

「はい。」

車中、沈黙が続いた。

(このまま、雨が止まないで、車で走り続ければいいのに‥。)

香澄は車の窓ガラスの向こう側を見る。

 

「この辺りでいいです。」

「送るよ。」

蓮司はすぐに車を降り、助手席のドアを開け、傘を差した。

その姿はとても慣れた様子に見えたけれど

香澄には特別に扱われているようですごく嬉しかった。

 

【タイミング】は作るものなんかじゃない。

俺たちは、(あたしたちは)自然にこうなったんだ‥。

求め合ってたんだ‥。

お互い、こういう関係になることは分かっていたし

望んでいたことなのかもしれない。

【香澄】も【蓮司】も思った。

 

繋いだ手は、しっかり握られて離さなかった。

そのまま二人は少しの間深い眠りについた。

 

【嘘】の愛情は嫌だけれど

【愛情】があるならいい。

そう思う。

嘘でなければ、それでいい。

あたしをきちんと見てくれればそれだけで充分。

さっきまでいた蓮司の姿に想いを馳せる。

 

【恋に落ちた時】

二人はもう引き返せなかった。

【香澄】も【蓮司】も。

 

そこに【覚悟】なんてものはなく

ただ【求められたい二人】のカタチだけが残っていた。

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