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ふたりで生きていくということ ~他のだれかと~ ネット小説【鳥籠の中の私】

蓮司と結婚して3年が経つ。

これまで、喧嘩をすることはたくさんあった。

言い争うことだってたくさんあった。

 

一緒に生活をすることって何だろうと思う。

 

【好きだから一緒にいる】だけでは成立しない気がする。

 

【生活】していくということは【生きていく】ということ。

【ひとり】ではなく【二人で】。

【結婚】とはそういうものだと思うし

だから【覚悟】が必要なんだと思う。

 

【覚悟】も簡単じゃない。

【結婚】において、【ひとり】では成立しない。

 

だから、いくら今まで喧嘩をしてきても

きっとうまくいっていたのは

「ふたりで生きていくって決めたんでしょ?」

そういう言葉が出ていたし

そう自分に思い返すところがあった。

 

いくら許せないところがあっても

許容範囲を超えそうになっても

自分が決めた【結婚という覚悟】があったし

【選んだ人】を間違っていないという【確信】を持っていたかった。

信じていたかった。

 

生きていくということ。

【二人で生きていく】ということ。

当たり前だけれど、住む家があり、食事をし、入浴もし、洗濯や掃除をする。

仕事をし、生活をしていくということ。

その【当たり前】が

どれだけ【幸せなこと】なのかを見失いそうな時がある。

 

選んだ人が自分の好きな人であり

愛する人であるということ。

また、その人も自分を選んでくれたという奇跡。

そんなことも見失いそうな時がある。

 

「俺は、京香と二人でいいと思ってる。」

その言葉は嬉しいと、幸せだと思う。

「京香が子どもが欲しいなら協力するよ。」

その言葉も嬉しい。

京香自身が悩んでいることを蓮司がそばで見ていて一番知っているのだから。

 

ソファーに座ったまま、蓮司のいない広いリビングを見渡した。

(こんなに広かったかな)

静まり返った部屋に明かりだけが灯る。

余計に寂しさが募る。

京香は【ひとり】になった気がした。

(ふたりで生きていくって決めたんでしょ?)

京香はそう自分のココロに問いかける。

そう、一緒に生きていくって決めたのはあたしよ。

ココロの問いに答えた。

 

京香との間に子どもが欲しくないわけじゃないこと。

ずっと二人で生きていきたい。

蓮司はそれしか願ってなどいなかった。

子どもが授かれば素直に嬉しいし、可愛い。

今より幸せが大きくなるかもしれない。

今が幸せじゃない、というわけではなく

京香と【ふたりで過ごす時間】を大切にしたいだけ。

だから、さっき、京香が食事を先に終えた時も

とても寂しかった。

(まるで子どもだな)

身体を横に向けた。京香はいない。

京香の匂いだけが残る。

(朝、謝ろう)

蓮司は目を閉じた。

 

子どもができたことを蓮司に話すべきか。

香澄はテーブルの椅子に座り、スマホを眺めていた。

驚くかもしれないけれど、彼ならある意味冷静なもかもしれない。

守りたい命がここにあるということ。

そばにいて欲しい人は違う人を愛しているということ。

(好きになんてならなきゃよかったのかな)

スマホの写真を眺める。

蓮司は大切にしてくれるし、会にも来てくれる。

香澄から奥さんの話はしなかったし、蓮司もしなかった。

この暗黙のルールはずっと続いていたし

守らなければ離れていくこと。

いろんな【覚悟】をしておけばよかった‥

香澄はため息をついた。

後悔はなかったけれど、【不安】はある。

ずっと傍にいて欲しい。

愛している人として。

そして父親になる人として。

 

その日の朝は少し雨が降っていた。

(今日は洗濯はお部屋かな)

京香はカーテンを開けてそう思った。

「おはよう。」

いつものように蓮司が声をかけてきた。

「おはよう。」

京香は笑顔で振り向く。

いつもの日常がまた始まるのかと思った。

 

いつものように朝食の準備を始める。

珈琲を入れ、食パンを焼き始める。

テーブルには蓮司の好きなマーマレードを置く。

お皿を並べ、簡単な朝食。

「用意出来たら教えて。」

そう声をかけた。

「もう食べよ。パンは焼き立てがうまいよ。コーヒーは温かいうちがいい。」

蓮司は笑顔で言い、テーブルへ座った。

 

変わらない生活に戻るのだと思った。

「あのさ、昨日‥」

蓮司が言いかけた時だった。

スマホが鳴った。

香澄からだった。

初めてだった。家にいる時に連絡があることなどなかった。

「見なくていいの?」

ラインを見るように促したけれど、蓮司は見ようともしない。

「あたしが気になるから見て。」

口調がきつくなる。

スマホを手に立ち尽くす蓮司。

【ふたりで生きていくって決めたんでしょ?】

この言葉だけが脳裏に残る。

答えが出てこない。

【ふたりで生きていくって決めたんでしょ?】

あなたは誰と【ふたり】で生きていきたいの?

 

もういつもの生活に戻ることはなくなる‥

そう思った朝だった。

 

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