ナツのsorary

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あとがき ネット小説【鳥籠の中の私】

この度、【PRIDE】【Visual】に続き

改めて書き始めた【鳥籠の中の私】でした。

 

これまでのものと違い

【夫婦の在り方】や【ふたりの意味】【ひとりの存在】

そして【家族の意味】について考えてみるとともに

【生活の意味】についても考えながら書いてみました。

 

あまりにも言葉では書き尽くせないことや

自分の表現力が足りないこと。

複雑でありながら

人の求めるシンプルな気持ちや欲

生きていくために必要なものもある。

 

それらを表現するには時間もかかり

簡単に言葉に表現できませんでした。

 

最近、【不倫】について世間はよく騒がれています。

いろいろな意見が行き交う中で

【当事者】たちは何を想い、抱いているのかなと考えます。

言葉にできない、苦しさ、辛さ、覚悟。

 

例えば、何かに【絶望】したとしても

それはまたなにかに代わるものが見つかるかもしれない。

新しい【希望】を自らの手で見つけられるかもしれません。

 

けれど、【失望】はすべて失ってしまう。

二度と取り戻すことはできない。

 

京香が蓮司に

「【私たちに失望したくない】」と言った言葉の意味。

【ふたり】には戻れないし

【夫婦】にも戻ることはない。

けれど、蓮司と京香の関係の未来に

また新しい道を見つければいい、という思いだったのかもしれない。

 

【絶望】はしているのかもしれない。

蓮司にも。京香自身にも。

 

けれど、この先、何年か経って

二人に未来があるとして

新しい道をお互いが見つけ

また同じ道を歩む時がくるのでしょうか。

 

【夫婦】のかたちではなかったとしても

お互いを認め合える存在や支えあう存在。

【ふたり】のカタチは【ふたりでつくる】ものだと思うからです。

 

これまでたくさんの方に読んでいただき、ありがとうございました。

 

                    Sorary

 

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サヨナラの本当の意味 ~あなたと呼ばれて~ ネット小説【鳥籠の中の私】

時間とは、不思議はものだと思う。

決して戻ることはない。

けれど、思い出すことはできる。

しかし、想い出を創っていくこともできるのだから。

 

二人はただただ黙ってチャイラテを口にするだけだった。

[このお店、まだあって良かった。嬉しかった。」

はじめの一言を切り出したのは蓮司だった。

[何も変わってないね。」

そういうと京香の顔を見て笑った。

京香はこの時初めて蓮司の顔を見た。

(少し痩せたな)

そう思った。

[このチャイの味も変わってないよ。」

そう言うとチャイを口にする。

[初めて飲んだけど、甘いね。京香が好きそうだ。」

蓮司もチャイを口にする。

(いつもはコーヒーしか飲まない。甘いといってもカフェオレくらいなのに。)

[仕事、忙しいの?」

[そうだね、今日やっと休み取った。」

蓮司は煙草に火をつける。

「京香は仕事、どうしてるの?」

さりげなく仕事のことを聞いた。

蓮司は京香がいなくなってから、京香の職場に連絡を入れていた。

何か分かるかもしれないと思ったから・・。

けれど、何も言わず、退職届を出していた。

「仕事はしてる。」

京香はそれだけしか答えなかった。

どこに勤めているとかどんな仕事をしているだとかいうことは言わなかった。

そこが分かれば、だいたいどこに住んでいるのか分かったのかもしれない。

「そうか。」

少し泣きそうになる顔をぐっとこらえる。

京香は何も聞かなかった。

 

「そろそろ行くね。このお店あって良かった。来たかったから。」

そういうと席を立とうとした。

「ねえ!」

蓮司は思わず引き留めた。

「なに?」

その表情の向こう側に君は何を見てる?

(どこかでもっと話さない?)

そう声をかけたい。

彼女のことを知りたい。分かりたい。知ってほしい。

「いや、なんでもない。」

蓮司はうつむいた。

 

「今日、ここに来て良かった。」

蓮司は顔を上げた。

「会えて良かった。顔を見れて良かった。」

君は俺を見てる。

「最後にあなたにさよならがきちんと言えるから。」

京香は笑顔で蓮司に話す。

 

俺のことを【蓮司】と呼ばない。

呼んだのは、さっき俺を見つけた時だ。

話し始めてから、名前を呼んでくれていないことに気づく。

 

俺は【京香】と呼ぶ。

君は【あなた】と呼ぶ。

さよならの意味なんて分かってる。

けれど、名前で呼んでほしい。

 

蓮司の目から泪が溢れる。

「行かないで。」

「どこにも行かない。

ただ、もうあなたと【ふたり】じゃないこと。」

 

【ふたりで生きていくって決めたでしょ?】

その言葉がどれだけ俺たちを強くさせてきたことだろう。

 

ああ、京香は【ひとり】で生きていくんだな。

 

「【夫婦】の意味はなくなったって思う。

【ふたり】の意味も。」

京香の声はとても静かで落ち着いていた。

 

「【夫婦】も【ふたり】も同じ想いや方向を目指していないと

努力していないと難しいと思う。

ひとりの努力だけでは決して成立しないと私は思うの。」

こんなに自分の言葉で伝えている京香は初めてかもしれない。

「【生活】は成り立っても【夫婦】は成り立たないし

求めあうこともなくなる。期待や希望もなくなる。」

ただ、京香の言葉を聞いていた。目を閉じて。

 

「わたしは、【わたしたち】に【失望】したくないの。」

蓮司は京香の顔を見上げた。

「いつかこの言葉があなたに届くことを願ってる。」

そう言うと、カバンを持って後ろを振り向き、歩き始めた。

ほのかに京香の香りだけが残る。

 

どこにも行かない。

【ふたり】じゃない。

【あなた】と呼ばれること。

 

京香の言葉たちがココロに切り刻まれていく。

(またね、なんて言えるわけないよな)

 

京香のあの力強い目と美しい瞳にはゆるぎないものがあったのだから。

 

いつか俺はまた会いたいよ、京香。

蓮司はココロからそう思った。

 

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再会 ~向き合わざるを得ない覚悟~ ネット小説【鳥籠の中の私】

家を出て2ケ月が過ぎようとしていた。

京香は住んでいた市を離れることにした。

なにもかもすべてやり直したかった。

やり直すというより【リセット】が必要だった。

 

京香は医療の仕事にはもともと携わりたかったので

ヘルパーの資格から取り

医療現場で介護業務の仕事に携わっていた。

とてもやりがいのある仕事だった。

 

【いのちの尊さ】を改めて知り

その【重み】を知る。

【命の誕生】とは正反対である【死】と向き合う。

 

【誕生】や【育てる】ことは喜ばれることなのに

【老いていく】ことや【死を迎える】ことは

離れようとするのはなぜなのか、と思ってしまうこともある。

 

生きていくうえで【喜び】だけではないこと。

【向き合わざるをえない】こと。

それを【覚悟】することがどれだけ大切なことなのかを思い知らされる。

 

(あたしは【覚悟】の意味を知らなかったのかもしれない)

京香は思う。

 

その日はとても晴れた日だった。

京香は、蓮司がプロポーズしてくれたカフェに足を運んでみることにした。

チャイラテが恋しくなったことと

まだあのお店があるのかとても気になってしまったから。

 

商店街を歩く。

小さなお店だけれど、お洒落なお店だった。

アンティークな家具で揃えられ、ソファーもあった。

床はオフホワイトのタイルで、壁は赤く、照明がとても綺麗だった。

出されるカフェカップもシンプルで好きだった。

 

看板を見つける。

(あった。)

黒板の看板が目印だった。

 

自動ドアが開く。京香は入った。

一番奥の席に入った。

 

目に入ったのは、蓮司の姿だった。

こんなところで会うなんて思ってもみなかった。

想像すらしていなかったから。

京香は立ち尽くしてしまった。

 

蓮司は連日の出勤からようやく解放された。

京香が出て行ってからというもの

仕事ばかりの生活をしてきた。

仕事をしていないとどうかなりそうだった。

だから、仕事をしたし、仕事もうまくいっていた。

ようやく、休日を取ろうという気分になったのは

京香が出ていって2ケ月が経った今日。

 

この日はとてもいい天気だったから

電車でカフェに向かった。

ひとりでカフェに行ったことなんてないけれど

京香にプロポーズしたところだから行きたくなった。

(まだあるだろうか)

商店街を歩き、京香のことを思いだす。

(このお店、可愛いね)

京香ははしゃいでた。

看板を見つけた。

自動ドアが開く。

「一番奥空いてますか?」

蓮司が店員に聞くと

「空いてます。」

そう言われると、一番奥の席に座り

「チャイラテを1つ」

と注文した。

(あいつ、チャイラテ好きだったもんな)

下を向いて、ふと微笑んだ。

チャイラテが運ばれてきた。

蓮司は初めてチャイラテを飲む。

(あまっ)

思わず吹き出しそうになった。

 

その時、誰かが立っていることに気が付いた。

「京香・・」

「蓮司」

こんなところで会えるなんて・・。

 

「一人できたの?」

蓮司が京香に聞いた。

「そうよ。あなたは?」

「ひとり。」

京香は目を合わせない。

「とりあえず座ったら?」

京香は別の席に座ろうとしたので

「一緒に話を少しだけしませんか?」

蓮司は京香に言ってみた。

京香は少しだけ間をおいて

「少しだけなら。」

そういうとチャイラテを注文した。

 

初めてプローズしてからもうすぐ4年。

【また今度ね】

その約束がこんな形になってしまったこと。

京香が笑顔でないことは一番蓮司が分かっていたこと。

 

【またね】という言葉。

俺は、今日言えるかな、彼女に・・。

 

一呼吸おいて、蓮司は京香の目を見た。

その目はとても優しかった。

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幸せだった日々 ~守られた家~ ネット小説【鳥籠の中の私】

もう【この家】にはなにも【ない】。

残されたものもない。

【ふたりの未来】もない。

 

ずっとこの家で守られてきて

また、この家を守ってきたけれど

もうこの家には【守るべきもの】がなにもない。

京香はそう思う。

 

蓮司をいつも通り、朝見送った。

「行ってらっしゃい。」

これが、蓮司にかけた【最後の言葉】だった。

京香の【最後の笑顔】だったけれど

蓮司が振り向くことはなかった。

 

出逢いは突然でもあり

次第に、抱く想いも強くなった。

お互いを想うようになり
【結婚】できたことは【幸せ】だったし【奇跡】だったと思う。

 

ただ、当たり前の日常を見失ってしまっていたのかもしれない。

彼を知らなかったのかもしれない。

【生活】という中で

【知らなさ過ぎた】のか【知ってほしかった】のか。

【許せなかったのか】【許したかったのか】。

 

どれだけ自分に問うたところで答えなど出るはずもなかったし

出ることはないだろうと思った。

 

なぜなら、【この家】にいる限り

この家の世界での空間でしか生きられないということ。

それを一番わかっていたから。

 

身勝手なことなのかもしれない。

 

許せないのは蓮司や香澄であること。

そんな憎悪の気持ちを抱いたまま生活していくこともできない。

この想いは消えることはないだろうし

時間とともに薄れていくものなのかもしれない。

 

けれど、忘れるならば

いっそ離れることをしなければ

この想いは強くなるばかりだ。

そういう自分が【許せなかった】。

いっそ、すべて彼らのせいだと思えればいい・・。

どこかでそう思う。

(あたしに子どもができてたら違ったのかな・・)

京香はそう思うのだ。

 

【生活】や【生きていくこと】を考える。

【ふたりで生きていくって決めたでしょ?】

その言葉を思いだすたびに、目を閉じる。

もっと大切にするべきことがあったのだろうか・・?

時間は戻らないということ。

今、【新しい命】があるという【真実】。

(ふたりで生きていくか・・)

荷物を片付けも終わり、リビングの天井を見上げた。

 

京香は玄関の扉を開けて外に出た。

荷物はキャリーケース1つに小さなハンドバックだけ。

鍵を郵便ポストに投げ入れた。

2,3歩歩き、家を眺めた。

「もう、本当になにもないのね。」

そう言うと、前を向いて歩き始めた。

 

蓮司はいつも通り、仕事を終えて帰宅した。

「ただいま。」

電気もついていなければ、京香がいる様子もない。

(どこか出かけているのかな)

部屋の明かりをつけた。

リビングは綺麗に片付けらていた。

2階へ上がり、スーツを脱ぐために、クローゼットを開けた。

(京香の服がない)

蓮司は愕然とした。

1階へ下りる。

下駄箱を見たけれど、京香の靴はある。
キッチンは片付けられているけれど

夕食の準備はされていなかった。

(夕食があるなんて当たり前のこと考えんな)

京香がいないことはすぐに分かった。

家事をしないことなんて今までなかったから。

(いつかこうなるだろうと思った・・)

ソファーに倒れこんだ。

いっそ俺を責めてくれた方がよっぽどよかった・・。

今までこらえていた泪が一気にあふれだす。

一言も責めず

「そばにいてあげて」

そう言った京香。

(一言もなしかよ。最後の言葉はそれかよ・・)

泪が止まることはなかった。

 

 

ただただ、京香の笑顔だけが思い浮かぶ。

一緒に暮らした【この家】。

ご飯や寝る時。一緒にお風呂も入った。

プロポーズはカフェだった。

幸せだった。

もう戻ることはない。

 

香澄からのライン。

「会いたい」

会いたい人はもういない。

必要なひともそばにはいない。

求める人も愛する人もいない。

「わかった」

送信。

 

半月が昇る日の夜だった。

京香は【守られた家】から出て行った。

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【幸せの意味】と【哀しみの意味】 ~光を目指して~ ネット小説【鳥籠の中の私】

【当たり前の日常】を失うこと。

それは失望と絶望でしかないのだうか。

果たして本当にそうだろうか。

 

望みは失ってたとしても

絶たれたわけではないということ。

これから何を望み

これから生きて行くのかは自分で変えていけるということ。

それに気づくのはもう少し後のこと・・。

 

 

【幸せの意味】を考える。

誰の?

幸せってなんだっけ?

【ふたりで生きていく】って決めたんでしょ?

誰と?

目を閉じる。

静かな部屋の中、雨の音だけが聞こえる部屋の中で耳を澄ます。

 

あたしは蓮司と生きて行くことを選択し

共に生きていくことを決断した。

そのための【覚悟】ならなんでもしようと思った。

それが【結婚】することなんだと思った。

共に生きるとは生活を共にすることでもある。

生活は生きていくことでもある。

【許すこと】をしなければ共に生きていけない。

けれど【許す】ことは難しい。

自分を許すことも難しいのだから・・。

 

蓮司からきたライン。

「子どもができた」

返信はしなかった。

 言葉がなかったし、見つからなかった。

怒りもなかった。

あったのは、【哀しみ】だった。

(どうしてあたしじゃなかったんだろ)

泪が溢れてくる。

蓮司の前では泪など出てこなかったのに・・。

 

「そばにいてあげて。」

その一言だけ送信した。

【これからのふたり】のことより

【これから生まれてくる命】の重さを知っているから。

それ以上のことはなかったし

子どもがいない京香にとって

子どもができない京香にとって

今【望む】ことは【新しい命】の大切さだったから。

 

京香からのラインを見て蓮司は思う。

香澄がどれだけ不安であることを分かっているのは

俺ではなく京香であること。

 

【ふたりで生きていくって決めたでしょ】

俺は、京香と喧嘩するたびに言ってきたし

自分にも問いかけた。

 

【結婚】して

この人を【守りたい】と思い

【そばにいて欲しい】と願い

【そばいにいたい】と思った。

それがずっと続くものだと思ってた。

 

「そばにいてあげて」

この言葉の意味。

守るべき人は誰なのかを京香は教えていること。

幸せにしたい人を一番哀しませてしまったこと。

自分への失望。

 それでも、守るべき人がいるということ。

【ふたりで生きていくって決めたんでしょ?】

その言葉はもう京香には届くことはないだろうと思った。

 

蓮司が今そばにいてくれているということ。

けれど、ココロは彼女を愛し続けているということ。

それは、これからも変わることは決してないだろう。

いくら求めあってもココロまでは求められない。

ココロは彼女にあるのだから。

そんなことは分かっていたのに・・。

 

そばにいても、こんなに彼が遠く

触れることはできるのに

深い哀しみに覆われてしまう。

この【哀しみ】はなぜ?

彼にそばにいて欲しいと望んだのはあたしよ?

 

それでも生きていくということ。

生きていかなきゃいけないということ。

【ひとり】で何を目指し

光はどこにあるのか。

 

雨はやみ始め、雲が少しずつゆっくりと動きだした。

(もう雨はやむかな。)

京香はカーテンから外を見上げた。

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